予測不可能な決定系

決定論的なのに予測が不可能……つまり, そういうことだよ

群の発見 #4

1月10日のまとめ.
テキストのp13からp15問1.6の前まで.

正n角形の(3次元空間内の)シンメトリー群をGとする.
正n角形の各頂点に1〜nと番号を付け,Aを360゜/nの回転とし,Bを頂点1と中心を通る直線に対して180゜の回転(裏返し)のシンメトリーとする.

このとき,Gは
G = \{I, A, \cdots, A^{n-1}, B, AB, A^{2}B, \cdots, A^{n-1}B \}
と書ける.

[証明]
問1.1より,|G| = 2n である.
また,\{ I, A, \cdots, A^{n-1} \}の各元がそれぞれ異なることは明らかである.

  1. \{B, AB, A^{2}B, \cdots, A^{n-1}B \}の各元はそれぞれ異なる
  2. \{I, A, \cdots, A^{n-1}\} \cap \{B, AB, A^{2}B, \cdots, A^{n-1}B \} = \emptyset

を言えればよい.

1.を言うためにには次の簡約律が言えればよい.

問1.3(簡約律)
a, b, cを群の元とするとき,ab=ac 又は ba=ca ならば b=c である.

[問1.3の証明]
ab=ac のとき,両辺にaの逆元を左から掛けると b=c となる. ba=ca のときは右から掛けるとよい.[問1.3の証明終]


問1.3より\{B, AB, A^{2}B, \cdots, A^{n-1}B \}の任意の2つの元A^iB, A^jB (0 \leq i,j \leq n-1, i \neq j)に対し,A^iB = A^jBならばA^i = A^jとなる.i \neq jよりこれはAの定義に矛盾する.よって1.が成り立つ.

問1.4
群Gは単位元eをただ1つ持つ.Gの各元aは逆元a'をただ1つ持つ.a'の逆元はaである.

[問1.4の証明]
群Gの演算を * とする.
e'をGのもう一つの単位元とすると,e' = e*e' = e となる.一つ目の等号はeが単位元であること,二つ目の等号はe'が単位元であることからいえる.
a''をaに対するもう一つの逆元とすると,a'' = a''*e = a''*(a*a') = (a''*a)*a' = e*a' = a'となる.一つ目,二つ目,四つ目,五つ目の等号はeが単位元であること,三つ目の等号は結合律からいえる.[問1.4の証明終]


2.を示す.
共通部分が空でないとすると,A^{i} = A^{j}Bとなる,0 \leq i,j \leq n-1が存在する.
この等式にA^{j}の逆元を左から掛けるとA^{i-j} = Bとなる(問1.4よりA^{j}*A^{-j}の結果が一意に定まる).
これはBがAのベキで表せることを意味する.一方,Bは頂点1を固定する裏返しなのでB=A^{i-j}=Iとなる.これはBの定義に矛盾する.
よって共通部分は空である.

1., 2.より
G = \{I, A, \cdots, A^{n-1}, B, AB, A^{2}B, \cdots, A^{n-1}B \}
がいえた.


正n角形のシンメトリー群Gは次の等式を満たす.

問1.5
BA=A^{n-1}B=A^{-1}B

[証明]
i を正n角形の任意の頂点とし,シンメトリーによる写り先を考えると,
 i^{A}=i+1, i^{A^{-1}}=i-1, i^{B}=n+2-i
となる.
よって,i^{BA}=(n+2-i)^{A}=n+3-i, i^{A^{-1}B}=(i-1)^{B}=n+3-iとなる.
任意の頂点の写り先が等しく,かつA^{n-1}=A^{-1}なのでBA=A^{n-1}B=A^{-1}Bとなる.[証明終]


一般の群Gの元aに対して,a^{m}=1となるような最小の正整数mを元aの位数という.
そのようなmが存在しないとき,aの位数は無限である,またはaを無限位数の元という.

「位数」という言葉には,“群の”位数と“元の”位数の2種類あるので注意.

aの全てのベキからなる集合は群Gの巡回部分群であり,それを\langle a \rangleと書く.
このとき,群\langle a \rangleの位数が元aの位数となる.
aの位数が無限のとき\langle a \rangleは無限巡回群となる.


乗法群\mathbf{C}^{\times}の有限位数の元を1のベキ根という.
1のベキ根ζ の位数がnのとき,ζ を1の原始n乗根という.
1の原始n乗根とは,n乗して始めて1になる数のことである.

例:
1の3乗根:\{1, \omega, \omega^{2} \}, (\omega = \frac{-1+\sqrt{-3}}{2})
1の原始3乗根:\{\omega, \omega^{2} \}
1の4乗根:\{ 1, -1, i, -i \}, (i^{2}=-1)
1の原始4乗根:\{ i, -i \}