予測不可能な決定系

決定論的なのに予測が不可能……つまり, そういうことだよ

群の発見 #2

今回はp.5〜p.11まで進んだので,そこまでのまとめ.

シンメトリーを数学の言葉で…

シンメトリーを文字を使って表す.

正3角形を正の向きに120゜回転させるシンメトリーをAとすると,240゜回転させるシンメトリーはAを2回繰り返したものなので,これをA\cdot A = A^2と書くことにする.
同様に360゜の回転はA^3となるが,これは単位シンメトリーと等しい.
単位シンメトリーをIと書く.すなわち,A^3 = Iである.

以上の記号を使うと正3角形の(平面内の)シンメトリーの集合は,

\{ I, A, A^2 \}

と書ける.


2つのシンメトリーを続けて行うことをシンメトリーの合成,又は積と呼ぶ.
1つの回転の逆回転もシンメトリーーであり,これを逆元と呼ぶ.
ある回転とその逆元の合成は単位シンメトリーになる.


少し一般的に正n角形を考え,正n角形の平面内のシンメトリー全部の集合をHとする.
正n角形の中心に関して \frac{360\textdegree }{n} の回転をAとすると,

 H = \{ I, A, A^{2}, \cdots , A^{n-1} \}

である.
正n角形に対しても,任意の二つのシンメトリーの合成はシンメトリーであり,あるシンメトリーの逆元もやはりシンメトリーである.

次に正n角形の(3次元)空間内のシンメトリー全部の集合をGとする.
今度は平面内の操作に加えて図形の裏返しを考える必要がある.

<ちょっと考えよう 問1.1>

 \sout{|G| = 2n} Gの元の個数が2nであることを示せ.
まだ|・|の定義をしてませんでした.


 H \subset Gであり,平面内の回転に関する操作はHで尽くしているので裏返しを考える.
裏返し,すなわち一つの頂点とその図形の中心を通る直線を軸とした180゜の回転はnが奇数の場合はn個ある.
nが偶数の時はそのような回転はn/2個であるが,各辺の中点とその対辺の中点を結んだ直線に関する裏返しもまたシンメトリーになり,そのような裏返しがn/2個ある.
よって,nの偶奇に関わらず正n角形のシンメトリーは少なくとも2n個ある.

あとは,これ以外のシンメトリーは存在しないことを示せばよい.
例えば,ある裏返しと回転の積や,2つの異なる裏返しの積が上記の2n個のシンメトリーのいずれかであることを言えればよいが,テキストのヒントに従ってあるシンメトリーが,

  • (i) 正n角形のいかなる頂点も辺の上の点も固定しない
  • (ii) ある頂点または辺上の点を固定する

の場合に分けて考える.*1

ここで,正n角形の各頂点に1〜nと名前を付けシンメトリーを区別すると,シンメトリーは頂点の移動で区別出来たことを思い出す.
すると,いかなるシンメトリーを施してもある頂点の移動先を決めるとそこから左回り(または右回り)に順番に残りの頂点の移動先も決まってしまう(nの次は1に戻る).

例えば上の例では正6角形をあるシンメトリーで動かし,頂点1が元の4の場所に移動したとすると,残りの2〜6は1から左,又は右回りに決まってしまう.
これを踏まえて(i)を考えると,ある頂点vが残りのn-1個の点のいずれかに移るシンメトリーは全部で2(n-1)個考えられる.しかし,これらは頂点の名前が元と逆順の時はある点が固定されてしまい(すなわち(ii)の場合になり),元と同じ時は一つの回転のシンメトリーで書けてしまう.
また,(ii)の時は頂点を固定するときはその頂点を通る直線で,辺上の(中)点を固定するときはその中点と対辺の中点を通る直線に関する裏返しのシンメトリーになる.
よって,正n角形のシンメトリーは回転又は裏返しによる2n個である.


このようなGを正n角形のシンメトリー群という.

群の定義

ここで改めて群を定義しなおす.

群(group)
ある集合Gが群であるとは,以下の性質を満たすときをいう.
  • (1) Gの任意の元x, yについてその積(合成)が定義されて,xyもその元となる.また,任意のGの元x, y, zに対して結合律(xy)z=x(yz)を満たす.
  • (2) あるGの元eが存在し,任意のGの元xに対してxe=ex=xとなる.この元eを単位元といい,通常1と書く.
  • (3) 任意のGの元xに対して,あるGの元x'が存在してxx'=x'x=eとなる.このx'をxの逆元といい,通常 x^{-1}と書く.


群の一つの元とは,正n角形の一つのシンメトリーのようなもの.
1つのものを知るには多くのもの全体を群として考えたほうがよい.

シンメトリー群Gは上記の(1), (2), (3)をいずれも満たしており,群である.

また,整数全体の集合Zは通常の和に対して群である.
単位元が0で,xの逆元は-xである.これをZの加法群という.
有理数全体Q,実数全体R複素数全体Cもやはり加法群である.
Q, R, Cから0を除いた集合をそれぞれ \mathbf{Q} ^{\times}, \mathbf{R} ^{\times}, \mathbf{C} ^{\times} と書く.これらは乗法に関して群になっており,それぞれQ, R, Cの乗法群という.

ちょっと考えよう 問1.2

Z, Q, R, Cは引き算に関して群にならないことを示せ. \mathbf{Q} ^{\times}, \mathbf{R} ^{\times}, \mathbf{C} ^{\times} は割り算に関して群にならないことを示せ.


いずれの集合も引き算に関しては結合律を満たさない(例えば, 1-(2-3) \neq (1-2)-3).
また,割り算に関しては単位元をもたない.(例えば, 3 \div 1 = 3だが 1 \div 3 \neq 3).

*1:点の名前のつけ方を踏まえたうえで,ある頂点は1〜nのn通りの名前の場合があり,その各々について残りの頂点が2通りあると考えてもいいと思う