予測不可能な決定系

決定論的なのに予測が不可能……つまり, そういうことだよ

本書の読み方(p.vii 〜 p.x)

正多角形や正多面体が対称な図形であることは直感的にすぐわかる.
では,それらの図形は「どの程度」対称なのだろうか.

例えば,正6角形と正4面体はどちらがどれだけ対称性が大きいだろうか.
このような疑問に答えるために対称性になんらかの尺度を導入したい.

定義(シンメトリー)
図形を動かして,元通りの位置に重ねあわす動かし方を,シンメトリーと呼ぶ.

例えば,正6角形を60゜回転させるのはシンメトリーである.
正方形よりも正6角形のほうがシンメトリーを多く持っている.
では,各図形に対してシンメトリーの個数が対称性の尺度になるだろうか.

実は,正6角形と正4面体はどちらもシンメトリーを12個持っているが,正4面体のシンメトリー全部の集合のほうが正6角形のそれより構造が複雑であることがわかる.
すなわち,図形のシンメトリーの個数だけでは対称性の尺度として不十分である.

定義(群)
ある数学的対象のシンメトリー全部の集合を群と呼ぶ.

対称性の尺度として群というものを考えていく.
一つ一つのシンメトリーの性質を調べるのではなく,シンメトリー全部を一つの構造物(すなわち群)として考えることが重要である.

第1章では,具体的な図形に対して群を考え,その概念を理解する.また,群論の基本的な定理であるラグランジュの定理,コーシーの定理を学ぶ.(証明は第4章)
第2章では,群という概念がどのようにして起こってきたかを歴史的に見ていく.代数方程式の解法,根の置き換えという考えから,方程式の根の間のシンメトリーを考える.
第3章,第4章では5次方程式の解法の不可能性やガロア群について見る.
テキストは第6章まであるが「ともかく本文を読みはじめてほしい」(テキストp.x)